ゆったりまったり雑記帳

その名の通り、雑記帳です。

「スペインのイメージ」展(上野) レポ

版画で読み解くスペインの歴史。

概要

上野の国立西洋美術館の企画展示室にて、9月3日まで開催中。
毎週月曜休館ですが、8月14日は開館するそうです。
9時半~17時半が通常の開館時間、そして金・土は20時まで開館しています。仕事終わりにぜひ。
当日券もまだあったので、人の少ないタイミング(夕方や平日)に行くとゆっくり見られます。

スペインは異郷だった

これは私が一番びっくりしたことなのですが、18世紀頃までスペインは「ヨーロッパじゃない」みたいな認識だったという話がありました。
あの宮廷画家・ベラスケスもいなかっぺなの⁉ というとんでもなく失礼なことを考えてしまいましたが、ブルターニュ地方と同じく「発見された」そして「スペインらしさ、というイメージを来訪者に抱かせた」ということなのです。
人の往来によってスペインという地がヨーロッパに「認知」され、その結果様々な文化やセルバンテスの著作『ドン・キホーテ』等も有名になり、その挿絵からこの展示は始まるのですが、当時のヨーロッパ諸国の人々が「スペインをどう受け止めたか」という点で非常に興味深い示唆を与えてくれます。
つまるところ「イメージにすぎない(あくまで「スペイン風」に仕立て上げられたものであって、本当の文化とは関係ない)」ものが「スペインらしさ」として受け入れられていく流れに、なんだかジャポニスム……ひいては現代日本ポップカルチャー等とも似たところを感じたりするなど。
そのイメージの流出を支えたのは版画の技術でした。
ここも日本の浮世絵と同じですね。
ゴヤの版画からは非常に歴史の重みを感じましたし、それをもとにして描かれた作品の多さ(ドラクロワなども構図を真似した)に圧倒されました。
異郷の文化を物珍しいと鑑賞するだけでなく、リスペクトするところはヨーロッパ芸術界、さすがの柔軟性です。

内戦を越えて

スペインの内戦(フランコ将軍によるもの)で20世紀のスペイン前衛芸術は厳しい弾圧を受けました。
それでもなお描き続けた、戦争の惨禍から目を背けなかった画家たちの魂には賞賛されるべきものがあると感じました。
戦争を題材にしたとされるピカソの《泣く女》も展示されていましたが、戦火で失われた作品もあるはずなのに、今ここで時を超えてこうして鑑賞できている奇跡に感謝の念が尽きませんでした。
内戦で多くの命や芸術作品が失われる中でも、決して歩みを止めなかったスペインの歴史に称賛を。
その輝きは今もなお燦然と。

展示作品の一部