10月なのにこの暑さは何なのですか? めちゃくちゃ困ります、早く長袖のおようふくが快適な時期になってほしいものです。
どうも星野です。溜まりに溜まっていた執筆をこなす会、そのいちは横浜美術館で開催されている「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展についてのレポートです。
会期は2020年1月13日まで、毎週木曜日が休館日ですが12月26日のみ開館するそう。年末年始(12月28日~1月2日)はお休みです。
開館時間は10時から18時、金曜日と土曜日は20時まで開館しています。1月10日~1月12日は21時まで開館しています。
ギャラリートークやミニレクチャーも随時開催されているようなので、特設サイトをチェックしてみてください。
今回の展覧会の舞台は1920年代のパリ。
画商のポール・ギヨームがアフリカ彫刻の仲買を通して一大コレクションを形成した時期にスポットが当たっています。
印象派が中心ですが、様々な様式の混在したコレクションとなっています。
12人の画家の主要な作品を画家ごとにエリア分けして展示しています。
そのなかでも印象に残った画家の作品をご紹介していきます。
まずはクロード・モネ。
よくアルジャントゥイユの絵を描いているなあと思っていたらどうやら住んでいたとのことで。
今回もアトリエ舟(水上のアトリエとして舟を使っていたのです)から描かれた風景画が展示されていたのですが、水のゆらぎを描かせたらモネの右に出るものはいませんね。
続いてシスレー。
彼はとても貧乏で、生前に成功はしなかったという不遇の画家です。
なんというか、すごくもったりした絵を描くなあという印象。
お次はセザンヌ。
ゾラの友人だったというのにびっくりしました。1890~1895の間でかなりスタイルが変わっています。
自然と人の調和をテーマにしていますが、塗り方や構図が本当に激変していて二度目のびっくり。
隣同士に違うスタイルの作品が展示されているので見比べてみてください。
私は変化した後(1985以降)が好きです。
仕上げへの抵抗感を感じさせる作品もあり、作品の「未完」というロマンにも浸れました。
次はマティス。
法律家から画家への転身を遂げた彼は、イスラム風の主題を描いた装飾性の高い画家です。
「フォーヴ(野獣)」と呼ばれる作風で、女性奴隷の「オダリスク」を数多く描いています。
ちょっとヘタウマちっくですが、構図のゆがみが何とも言えない味わいを醸し出しています。
色づかいがカワイイ。簡略化された身体と装飾性が見所です。
1910年にキュビズムが台頭し、1920年以降は新しい作風が数多く生まれた時代でした。
そんな渦中にあったアンリ・ルソーの絵画はじょうずなんだけれどのっぺりしている、素朴派とレアリスムの間にある作品を描いていました。
妙にリアルで、どこか変で。ちょっと怖い絵もあります。動きがなく、モニュメンタルと評されます。
ピカソの絵画もありました、ギヨームは前衛芸術を支援しており、彫刻や陶芸も集めていたとか。
奥さんのドメニカさんはかなり個性的なひとだったらしく、主人の亡き後は再婚してコレクションを改変、そして最終的に国に売却したそうです。
奥さんとてもパワフルです。
閑話休題。
ピカソの絵画は新古典主義(キュビズムのあとに台頭)の色濃い作品を中心に蒐集されました。
デフォルメとたくましさを併せ持つ豊かな絵画が多かったです。
この次が今回の目玉作品の生みの親・ルノワールです。
1881年からルネサンス美術に魅了され、古典的スタイルと主題を好んで描いていたそうです。
色彩についての科学的な知識が研究されだした頃に描かれた作品ですので、かなり光の当たり方で見え方が変わります。
蒼緑の絵の具を使っているのに白い肌に見えるのが不思議でした。
よく光の効果を考えて描いたのだろうと推察されます。
夢見るような表情、バラ色に染まった頬……とてもキュートな女の子の絵がたくさんです。
リタッチと陰影によって、人間の目の錯覚を起こし、ひとりとして同じ色彩に見えない絵画を制作したところにルノワールの凄さがあります。
ちなみにギヨーム、とてもおしゃれな家に住んでいたので、普通に現代のインテリア雑誌に載せてほしい。
これも展示で確認できるので是非。
ここからはちょっとマイナーになってきます。
モディリアーニはもともと彫刻をやっていたそうですが、特徴をとらえたヘタウマ、って感じです。
いびつさが味わいを生む例・そのに。
ドランはフォーヴの一員で、リアルと印象のはざまにある作品を制作しました。静物画がとてもドラマティックです。
筆致の使い分けによる作品のリアリティと、どこか浮遊感のある作品が気に入りました。
近くと遠くでまったく見え方が変わるので、いろいろな角度から楽しんでください。
この展覧会でまたひとり、推しが増えました。
その名はマリー・ローランサン。
やわらかくしなやかで、幻想的な作品が私の心をつかんで離しませんでした。
ピンクと白の女性らしい色彩感覚もかわいいです。
簡略化されているのに、神秘的な美しさが宿っています。
実はココ・シャネルと同い年で、彼女の肖像も描いていましたが、シャネルさんめちゃくちゃ美人でした。
やはり絵画にもコンテクスト性(作品間の相互影響や、時代による作品の位置づけ)があり、それから逃れることはできないのだなあと思いました。
それを味わってこそほんとうの芸術鑑賞なのでしょうが、文学批評のように理論的に分析したり、心の赴くままに好きな作品を推していったり、愛し方は様々で良いとは思うのですが。
様々な作品の、作家の、相互関係性を考慮しつつ、自己のうちに眠る新たな趣味嗜好や知識などの発見をしていけば、作品が世に残っている意味もあるのではないかと思います。
今回の展示はコート―ルド美術館展ともリンクする内容が多くあるので、どちらも行くと楽しいですよ。
次回は「不思議の国のアリス展」です、お楽しみに。
それでは、また。