ゆったりまったり雑記帳

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ル・コルビュジエ展レポ【note・ブログ共通記事】

突然の臨時収入に小躍りしてまた出費するという阿呆の極みをやりました。

どうも星野です。

今日は現在国立西洋美術館で開催中の「ル・コルビュジエ展」に行ってきた、という話をします。

国立西洋美術館の開館60周年を記念して、5/19まで開催される予定です。

原則17:30まで観覧可能、月曜日定休。

彼が設計した本館で、彼の作品を楽しめるというファン垂涎の企画なので、建築に詳しい方もそうでない方も是非。

 

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国立西洋美術館前の看板

 

ル・コルビュジエ、本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。

第一次世界大戦後のフランス活躍した、純粋主義(ピュリスム)の旗手です。

絵画から始まり、建築や家具・都市デザイン、出版等マルチに活動を展開し、一躍脚光を浴びることになりました。

日本で有名なのは2016年にユネスコ世界文化遺産に登録された、国立西洋美術館本館でしょうか。

それ以外にもパリの都市計画を任されていたり邸宅のデザインを行っていたりと本当に手広く活動していたことが伺えます。

 

私も正直この時代の美術には詳しくないのですが、まず純粋主義とは何なのか、というところから。

 

芸術にも規則性が必要だと考えたル・コルビュジエと、彼の絵画の師にあたるオザンファンは、直線・円形など幾何学的な絵画を発表していきます。

古代ギリシャの建築にも、フランス古典主義絵画にも、近代的機械との間に何らかの関係性を持つのだと考えたためだそうです。

題材はどこまでも機能性に優れたもの……例えばコップや瓶、ギターなどを、「構築と総合」という観点から形を融合させて描いているのです。

この「構築と総合」について書いた雑誌が「エスプリ・ヌーヴォー」であり、当時は革新的だとされていました。

オザンファンはル・コルビュジエに油絵を教えましたが、その後方向性の違いにより1925年頃ケンカ別れをしてしまいます。

 

コルビュジエの絵画で、驚くべきはその素描力。

綿密に計算された画面には無駄が一切なく、かつ視線の誘導が意識的に行われているのです。

画面底辺から中心軸に向かうふたつの直角三角形の位置を「戦略的な中心点」とし、規整線(トラセ・レギュラトゥール)と呼ばれる線をいくつも引いて、絵画全体のバランスを整えています。

 

彼が最初に描いた作品は「暖炉」というのですが、暖炉の上に豆腐のような真っ白い立方体がぽつんと置いてあるのです。

これはギリシャアクロポリスをイメージしているとの解釈があり、アクロポリスは彼の理想の建築でもあったらしいのです。

 

たぶんこれらの絵画をご覧になった方は「題材を分解して描くのって、キュビズムと何が違うの?」と思うでしょう。

私も同じことを考えていました。

ル・コルビュジエ自身は最初キュビズムを批判していたそうですが、その根底に「幾何学的秩序に支えられた芸術」という純粋主義との共通点を見つけ、次第に接近していくようになりました。

 

キュビズムでは隣り合うものを同一の線で結び、対称な形によって統一感やリズムを生み出していたのですが、それは実質のところ純粋主義と重なる部分は大きかったように思えます。

コルビュジエキュビズムと交流を持つようになってから、絵画に色彩が宿るようになるので、その違いを感じるのもひとつの面白さです。

 

ただ、純粋主義では「形の無駄のなさ」が重要で、日用品が主な題材であり、機械産業によって生み出された製品の立体的な形を再構成するのが役目、だと考えられていました。

そこがちょっとキュビズムとは違うかな……という個人的な感想です。

 

キュビズムの絵画も展示されていますが、私が気に入ったのはレジェです。

キュビズムにしては珍しく曲線で女性をふたり描いています。

どこかロボットのようで、工業製品に美を見出していたことが伺えます。

この人はバレエや映画の演出も手がけているそうで、かなりこの時代の芸術家はマルチに活動していたのだなあと驚きました。

 

そんな純粋主義の作品は、ほとんど装飾がなく、色も乏しく、初期の絵画作品には寓意よりも「形の美しさ」を見せつけるような印象があります。

ストーリー性がなくても「あ、なんとなくだけど良さがわかる」と直感に訴えてくるのです。

ですが、画家自身の力量をあえて誇示しないというか、素材の良さそのままで勝負したいという姿勢に私は感動しました。

 

ル・コルビュジエは、第一次世界大戦後のパリの復興計画の一部に関わっていたそうです。

ポワザン計画と名付けられたそれは、パリの街を直線的な道路と自動車社会に対応した高層ビル群から成る、近代的な都市計画でした。

緑地や公園も取り込まれており、みんなが幸せになれる都市計画を目指したそうなのですが、ここでも彼の「無駄を省きたい」という意思が貫かれているのを感じます。

実際にル・コルビュジエは「家は住む機械」とも言っていたそうで……極論すぎる……。

彼の設計した邸宅の模型なども見られたのですが、確かに余計なものが一切ないです。

 

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本館内部

 

だからなのか、国立西洋美術館本館の中で、自分が今どこを歩いているのか若干わからなくなって、迷子になりました。

方向音痴にはちとキツイです。

写真可能エリアであるロビーは、光を取り入れる窓が天井についており、1階と2階を隔てることなく一体化した空間という感じ。

これをコルビュジエは「建築的プロムナード」と名付けたそうです。

またバルコニーに上がる階段も手すりが片方しかなくて、手すりさえも余計と考えていた節もあるらしく、「これのぼるの怖くない!?」と内心ヒヤヒヤしておりました。

(※バルコニーへの階段は封鎖されています。立ち入り禁止です。)

ちなみにこの国立西洋美術館本館、「無限成長美術館」とル・コルビュジエが呼んだそうなのですが、それはコレクションが増えたら本館を中心にして螺旋状にどんどん増築していけばいいじゃないか、という彼の思惑があったから……とのこと。

やっぱり使う人のことは考えてくれるのですね。

ちなみに本館の2階奥は183センチの人間を基準にして設計したそうで、基本寸法に黄金比を足した「モデュロール」という尺度とのこと。

な……なぜ183センチ……?

建築に疎い私には謎が残りました。

 

ル・コルビュジエの建築で五大要素と呼ばれるものがあり、「ピロティ(支柱)」「屋上庭園」「自由な平面」「連続水平窓」「自由な立面」がそれにあたるとのことで……私にはちょっとハードルが高いので建築にお詳しい方のお話も伺いたいところですが、全体的に窓の多さと開けた空間の多さが目立つかなという印象です。

 

後半では彼の設計した家具も展示されていたのですが、人間工学に基づいているのでとても楽なのだそう。

普通にオシャレです。なんかコンセプトショップとかで10万くらいで売ってそう。

 

最後に付け加えておきたいのが、コルビュジエが求めたのは無駄を完璧に排した先にある、自然と融和することだった、ということです。

透明なモチーフの重なり合いと広がりが、彼の創作に刺激を与え、そして彼の追い求めたものだったのです。

 

まだまだ期間はあるので、是非足を運んでみてください。

金曜日と土曜日は20時まで開館していますので!

土日は混むかも!

 

それでは、また。