ゆったりまったり雑記帳

その名の通り、雑記帳です。

2017年夏アニメ考察~獲得と喪失の観点から~

花粉症で目がショボショボとかゆかったのがおさまり安息を得ている星野です。
今日はアニメ・漫画・小説等のヒット作品における喪失と獲得の話をしたいと思います。
題材は2017年夏アニメを中心に据えています。

でも最初の分かりやすい例はちょっとそこから外れまして……
まず少年誌で触れておかなくてはならないのが「ONE PIECE」ですよね。
私もサンジくんの本当の過去(出生の話)辺りまでは読みました、続きをちゃんと読まなくては。
原作の内容にまでは触れませんが、ある程度予備知識があると楽しめるようになっておりますので。

麦わらの一味は総じて過去が重いですよね。
故郷焼かれてたり親が死んでたり…でも意図してそういう話型をなぞってる気がするんです。
不遇な生まれ、愛された経験、そして大切な人との死別(またはそれに準ずる経験)、それでもなお強くまっすぐに生きてきた信念。
それを私は尊敬を込めて優れた「心意気」と呼びます。尾田っちリスペクトです、はい(笑)
大人になるまではその物語を活劇として受け止めるのではないでしょうか。
「ああ、弱く虐げられていた存在が今強い相手をぶちのめした」
……ジャイアントキリング(大番狂わせ)とでも言えばいいのでしょうか?
でも「ONE PIECE」の初期の話は、大人になってから読み返すと「この感じわかる」ってなる人が多いのでは? と勝手ながら推察します。
人生経験が豊かになったぶん、抑圧されてきた部分が心のどこかに残っていて、それを癒してくれる物語を求めているのでしょう。
かくいう私もそのクチです。
私は小学生の頃、原作コミックスの仲間の過去を読んでいました。
ナミちゃんの話とかサンジくんの話とかロビンちゃんの話とか、感動して大好きだったのですが……
今思うとそれぞれ「過去との決別(ナミ)」「自立(サンジ)」「自己否定・自己嫌悪から受け入れてくれる共同体への参加(ロビン)」という主題を感じざるを得ません。
そしてそれが自分の生き方や今までの人生経験と照らし合わせて、「琴線に触れる」「響くものがある」という評価に繋がっているんだと考えております。
これが多くの人々にフィットする形だったからこそ根強い人気があるのだと思います。
ONE PIECE」の支持層は幅広いですが、支持されるのには「誰の心にもある原初的な喪失と獲得の物語」を描いているのかなって思うのです。
何か大切なものを喪った経験と、そこから新たに何かを見つけた経験……それが「ONE PIECE」を貫く主題、という風に私は読みました。
その象徴が、エースを喪って心が壊れて、でもジンベエさんに諭されて「仲間がいるよ」と気付くあの名シーンなんだと思います。

ONE PIECEはいいぞ。

という番組宣伝をしたところで、「ONE PIECE」よりもう少し古い作品と、最近の作品に視点を移してみましょう。

古い方で言うと「最遊記」シリーズがありますね。女性ファンが鼻血噴いちゃうやつ(風評被害ですね、すみません)。
私はあれの外伝が獲得と喪失という話型をなぞっていると思っております。
詳しくは触れませんが、主人公格のひとり・悟空を生かそうと、本気で大人が奮起する展開が胸を打ちますよね。
精一杯生きろという捲簾のメッセージに何度泣かされたことか……私は思い出すだけで泣けます(笑)
大切なのは、ここでも獲得と喪失が起こっているということ。
悟空は外伝編で仲間を手に入れ、そして喪失し、また本筋のシリーズで三蔵一行に拾われることになります。
この獲得・喪失については電気通信大学で文学を教えていらっしゃる島内景二教授の理論とも似通ってきますが、ヒット作が助けてくれるモノあるいはヒトをめぐる出来事の連鎖になっているということについては私も同意見です。
最近の作品になってくるとその傾向が少し変わってきますが、だいたいは同じです。
君の名は。」も三葉と瀧という運命共同体の獲得に始まり、一度三葉が死ぬという喪失とその回復(再獲得)……という話型になってますよね。
それが「宝石の国」でも受け継がれています。
主人公のフォスフォフィライトが仲間を失い、あるいは体の一部を失い、そして戦闘能力などを再獲得する。
ただ、「宝石の国」ではここに「他者」の存在と「自己」との向き合いというものが色濃く反映されてきます。
もちろん、「ONE PIECE」や「最遊記」でも各登場人物の自己意識や関係性の変化が見られますが、それをよりセンチメンタルに、脆く弱くほの暗く描いたのが「宝石の国」と言えるのではないかと思っております。
連載されているのが少年誌か女性誌か、そして女性誌のなかでもどういうジャンルに位置するのかによって変化していると考えられますね。
宝石の国」では主人公が力を得ていく過程で多くのものを失います。そして自己意識も大幅に揺れ動きます。それこそ、自分を追い込みすぎて病んでしまうかのように。
でも最後まで手にしたいものには触れられないのです。助けたいものも守りたいものも何一つ手の中には残っていかない……
そんな切ない感情が胸中に湧いてきます。
時代の変遷によって、少しずつ、獲得と喪失の話型が変化しているのではないか? というのが私の見解です。
あ、これさくらちゃんのクリアカード編とクロウカード編とさくらカード編で考察してみたら面白そう。
今度やってみますね!(需要はあるのか?)

そんなところで本日はおしまいです。
お付き合いいただきありがとうございました。
では、また