ゆったりまったり雑記帳

その名の通り、雑記帳です。

「そこに光が降りてくる」(目黒) レポ

2025年2月16日に閉幕した、青木野枝さんと三嶋りつ惠さんによる美術展。
すごいものを観たので共有します。
東京都庭園美術館にて開催、現代アートの粋を極めた時間でした。

ポスター

「概念」への抵抗

青木さんは鉄を、三嶋さんはガラスを、それぞれの方法で現代アート作品へ昇華させていきます。透明に輝くガラスと、重厚感と堅牢さが魅力の鉄では「美しさ」へのアプローチが違うと勝手に思っていたじぶんを殴りたい。
鉄のオブジェにある種の儚さを、ガラスの球に力強さを感じることがあると気付かされた体験の連続。鉄イコール無骨、などと思ってはいけない。
朝香宮邸の内装に、もともと存在していたと言われても違和感のないほど「あるべき場所に在る」作品群を次々と目にしていくなかで、己の先入観をぶち壊されていく感覚が新鮮でした。
素材にしたものに宿る「美しさ」を、多様・多彩に引き出し作品へ変換する手腕に息を呑むばかり。鉄とガラスは相反するものではなく、ともに調和し光を受けてつややかな手触りを(触らなくても)感じさせるのです。

展示されていた作品

どんなに作品を生み出しても、作品を受け止めて鑑賞する存在が居ないと「美しさ」という感覚は成立しない。どんなに優れた素材でも、その良さを引き出してくれるアーティストに出会えなければ意味がない。
すべてが奇跡のようなめぐりあいだ、とぼんやり考えていました。
人間が知覚できる「美しさ」の幅を広げられるのが美術展の良いところだと勝手に思っているのですが、今回も魂を強く揺さぶられる感じがしたので、たいへん楽しかった(知的好奇心を刺激されたということ)です。

展示されていた作品②

人間が何かに対してきれいだ、とか素晴らしいと感じるその手前におそらく「衝撃」があって、これは何だろう、気になるとかびっくりするから感覚が働くような気がしました。作品たちを呼吸も忘れるほどじっくり見つめて、その先に「あれが気に入った理由は……」と考える。そういった思考による試行錯誤の営みが大好きな人間としては、行って良かった展覧会ランキング上位に食い込むこと間違いなし! とお世辞抜きに思う展示でした。
またおふたりの作品を鑑賞したいし、きっと鑑賞したあと「今回もわたしの先入観とか美に対する意識とか、粉々になって再構成されたぞ」とたいへん満足しながら帰るだろうことが予想されます。