ゆったりまったり雑記帳

その名の通り、雑記帳です。

「ブダペスト展」 レポ【note・ブログ共通記事】

毎日書き続けている時にだけ見えてくる景色がある……わかるよ(刀剣乱舞より豊前江のセリフを引用しました)

どうも、やることが無くて半分昼夜逆転になりつつある星野です。今回は現在展示が中止となってしまっている「ブダペスト展」のレポを書いていきます。

これもnote・ブログ両方に記事がありますので、お好きな方でお読み頂ければ。

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会期は316日まで、もしかしたら変動があるかもしれないので公式Twitter @NACT_PR を確認してください。

休館日は毎週火曜、10時~18時開館、毎週金曜日と土曜日は夜間開館日のため20時まで開いています。

今回はフォトスポットが無かったのですが、展示そのものは特大ボリュームなので時間に気を付けていってらっしゃいませ。

 

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入り口の様子

 

まずは背景知識として、このハンガリーという国の成り立ちから紹介していきます。

長くオスマン帝国・ハプスブルグ家・トランシルヴァニア3国に支配されていたこの土地に、実は西洋の美術品の粋を集めた美術館があるのです。

それがブダペスト国立西洋美術館。そこに所蔵された、エジプト・ギリシャから現代アートまで2000年間の24万点におよぶものから代表的なものを展示、というからすごいです。

今回はハンガリー・ナショナル・ギャラリーも協賛として参加しています。

やっぱりこの地方なので2019年に日本との国交樹立150年なのですね……わたくし、やたらとこの時代の美術には詳しくなれた1年を過ごしております。

 

最初はドイツ・ネーデルランドの芸術。見どころはやはりクラーナハ()の風刺画でしょう。

不釣り合いなカップル、と題された2作品は、愛情とは何か、若さと欲、というものをニヒルに描いています。

結構最初からぶっ飛んだの選ぶなあ、と思ったのもつかの間、イタリア宗教画のコーナーへ。

 

油彩からペン画まで、ありとあらゆる作品が並ぶエリアには、聖母子像が所狭しと展示されていました。

何よりティツィアーノの聖母子像が見られるのは大きいです、これだけでも来た価値はある。

宗教性・思想性が良く出ているので、なんとなくですが文学における「解釈」の違い、みたいなものにも目が向きます。

というのも、同じ主題でも全く構図や与える印象が異なるので、宗教という「大きな物語」が持っていた解釈の多様性を感じずにはいられませんでした。

キリスト教になじみのない私たち日本人にはそう見えるだけ、という話なのかもしれませんが。

ただ、神々しいものの背後には必ず後光が差すのは万国共通だなと思いました。

 

続いてオランダ17世紀、黄金時代の絵画へ。

教訓的主題を日常性のなかに溶け込ませた逸品が揃っています。次の1619世紀スペイン絵画と比較すると、オランダがどこかぼやっとしているのに対しスペインは戯画的。

魔除けにアナグマの手を使う、という謎知識を得たところで、はじめて私はゴヤの絵画と邂逅しました。

写真で見ていたのよりもずっと、描かれている人物の内面描写をするタイプの画家だったようで、なんとなく描かれた人物の性格を想像できてしまうところがすごいと感じました。

 

続いてイタリア・オランダの、特に静物画のコーナーへ。

一目ぼれした作品がありまして、それがno.39「果物、魚介、高価な食器のある静物」というやつです。もう一瞬で惹きこまれました。めちゃくちゃゴシックで素敵。

風景画と合体した絵画や、犬がじゃれついてきてしまったがゆえに少年が持っていたバスケットから果物が落ちている絵画などもあり、まだ静物と人物画その他との区別が明確についていないのかなあと思っておりました。

そういう区別は後付けのものなのかもしれない、とも感じます。

 

続いて1718世紀の風景画へ。ちょうど産業革命が起こり都市化が進んでいくなかで、自然と都市開発が融合したような絵画が多く見受けられました。

古代ローマの遺物なども絵画に残っており、そういうオリエンタリスムも感じられた時代だったのだろうと推察されます。

ゴシック教会の絵画が、どこかダークで、でも荘厳で、とても気に入りました。

総じてこの展覧会はヒットが多かった気がします。

 

続いて彫刻のコーナー。水晶で出来たものや、板に凹凸を付けたものも彫刻、としていて、やっぱり懐が深いというかなんというか……芸術の世界は奥が深い。

何となくですが、日本の仏像が柔らかいイメージなのに対し、西洋のブロンズ像はやはりカタイですね。材質の違いということもあるでしょうが、雰囲気もまるで違うので驚きました。

欠伸をする人の彫刻もあって、ちょっと笑ってしまいました。

 

ここでハンガリーを代表する画家3名にスポットが当たります。

ヤカブ、ダーニエル、そしてアーダーム。それぞれ質感にこだわったリアルな絵画、輪郭のはっきりした絵画、小物の描写が細かい画家、という感じ。

アーダームはトランシルヴァニアで活躍していたそうで、そこの風土や文化の影響もあるとは思いますが、もっと影響を与えていたのは「ウィーンの芸術文化」だと思いました。

1920世紀のハンガリー絵画になるとそれは顕著に表れ、印象派自然派といった主な絵画の潮流に、ウィーン独特の芸術感覚が入り込んだ見ごたえのある作品が多く生まれます。

No.70no.72は個人的お気に入りで、当時の「ビーダーマイヤー」をよく表していると感じました。

 

次のレアリスムのコーナーは、思いがけずルノワールの絵画に出会えたり、新たな推し・ミハーィに出会ったりと長居してしまったエリアとなりました。

ルノワールは他の同時代の作品と比べてみても圧倒的に「違う」ということが強調される展示の配置だったなあと思います。

あのぼんやりしているのに明確に見える輪郭線などは、見ているとうっとりしてしまいますね。

ミハーィは人物や風景を独特のリアリティ(現実にあり得るか、ということではなく、ミハーィのなかで整合性が取れているという意味です)がありました。とってもゴージャス。

個人的にはカーロィの描くドレスがヴィンテージ風でとても好ましかったです。私も着たい。

そして今回の目玉作品「紫のドレスの婦人」シニェイ・メルシェ・パール作とご対面。

色や輪郭がはっきりしていてとてもパンチが効いているのですが、特に「ヒバリ」という作品は、当時評価されなかったそうです。というのも、絵画にストーリー性が無かったため、といわれています。

ここで「芸術とは何だろう」と考えることになるわけですが、私個人としては「誰かが感動したなら芸術である」というスタンスなので(これも現代の思想なのかもしれませんが)パールが評価されなかったのは、おそらく時代を先取りしていたからなのかな、と思っています。

また、この時期から戸外制作も盛んになり、あのドビーニーの作品にも触れることができました。ユーモラスであたたかな絵画がいっぱいです。

ミハーィは埃っぽい道すらも美しく描くからすごい。推せる。

そこから客観性を重視した自然派に潮流が移っていきますが、風景画もクリアになったぶん社会の暗部にも目を向けた作品が多くなります。

孤児や貧民など、名もなき人々は何を祈ったのだろうかと、想像が膨らみます。

世紀末に入ってくると、少しずつ社会の不安感から「寓意・象徴・神話」がテーマの作品が多くなります。

こう見てくるとすごく世界史の勉強にもなっていいなあと。(私は高校時代日本史を選択しました)

個人的本展覧会の真の目玉作品はコレだ大賞は、no.112「黄金時代」です。クリムトなどが推進した分離派の影響を受け、寓意・調和・メッセージ性といったものが強調された作品です。

画面の色や構図の統一感が素晴らしい。美とはおそらくこういうのを指して言うのだ……と思いました。

最後のほうになってくるとだんだん抽象化・平面化が進み、ゴーギャンなどの影響がみられてきます。

ココシュカなどに代表される大胆な構図や色づかいに目を奪われます。

最後は現代アートなのですが、「社会変革のための芸術」という前衛的な作品が並んでおり、改めて「芸術とは何だろうなあ」と答えのない問いを突き付けられた気がします。

 

芸術は観る人・描く人の二者の対立ではなく、あくまでもその場や社会的な空間というのもあるのではないか、と思いながら展覧会を後にしました。

出来ればもう一度見に行きたいです。

それでは、また。