ゆったりまったり雑記帳

その名の通り、雑記帳です。

バンクシー展 レポ【note・ブログ共通記事】

父が入院することになりました。しかし「暇ですることがないから相手して」と娘に夜中にLINEを送るのはどうなのか。私は今日も仕事だぞ。どうも星野です。今日は駆け込みで「バンクシー 天才か反逆者か」(横浜アソビル)に行ってきましたので、そのレポを書きたいと思います。

会期は927日まで。平日大人1800円、休日は2000円。20:00まで開館しているので、平日チケットを買って仕事終わりに行くのがベスト。そのかわり1時間入れ替え制、かつ日時指定です。密を避けるという意味でも、良い措置ですよね。場所は横浜駅みなみ東口出てすぐ。駐車場もあるみたいです。

今日はアソビルのなかでごはんを食べたのですが、牡蠣のクリームグラタンがおいしくて。1Fに飲食スペースがあるので、帰りに呑んでいくのもお勧めです。

 

バンクシーは例の「超高額落札が決まった瞬間に作品がシュレッダーにかけられる」という事件で有名になったところがありますが、彼の描く世界は常に直感でわかる「不条理」「矛盾」を突いたものです。少女が爆弾を抱きしめていたり、家族に銃の照準が当てられていたり。観る者の背筋を一瞬凍らせる、鋭利な刃物のような作品群です。多くは世界各国の路上の壁に書かれていますが、絵画として残したり版画にしたりと様々な活動をしているようですが……その全貌は明らかになっていません。彼(彼女)が何者なのか、そのすべてが謎。そこも人々を熱狂的に惹きつけるポイントだと思います。

 

今回は社会風刺を中心とした構成で、音声ガイドも貸し出しとスマホQRコードの2種類で楽しめます。描かれているのは国会の様子、だけれど登場しているのは皆チンパンジーだとか、ネズミを主題として描いた作品など、どれも「いまのままでいいの?」と我々に重い問いをぶつけてくるものです。それもそのはず、このステンシルの方法で描かれた作品群は社会に対抗する手段、ひとつの批判の媒体としての絵画なのです。ここまで政治色の強い画家ははじめてです。だから副題が「天才か 反逆者か」なんだな、と漠然と思っていました。彼は紛れもなく天才です。描画のスキルも画面構成も卓越しています。しかしその主義主張、思想と言ってもいいかもしれませんが、それが「反戦」「消費社会への警告」など、様々な現代の問題に切り込んでいるのです。彼は大衆社会の消費行動を何度も風刺しているのですが、イギリスの美術館で展示をやった際も報酬はたったの1ポンド、それでもたくさんの作品を作り、名作をオマージュして現実社会の問題をこれでもかと風刺した作品を展示したそうです。そこに見える顔は「反逆者」のそれであると言っても過言ではないでしょう。

 

バンクシーの作品は盗難にも遭っていますし、高値で取引されていますが、その消費の形態にあまり良い思いを抱いていないのがあの「シュレッダー事件」につながったのだと思うのです。彼の作品はパンクで、なにより伝えたいメッセージが明確です。誰にでも届く方法で発されている警告を、それこそ高い価値のついたただの置物(=大衆社会の消費行動の結果)にしたくないのでしょう。私はこのバンクシーという画家に対して、かなり怖いなという印象を受けました。その理由はいくつかあります。今まで私が見てきたどの作品よりも、現実世界と密接にかかわっていること。センシティブな内容に臆せず触れていること。何より、世界を敵に回しかねないこと。アートに政治を持ち込むことを許さないひとからは、ひどく嫌われるだろうし、そういう嫉妬する人によって絵を塗りつぶされたこともあるそうです。それだけのリスクを負いながら、様々な表現方法に挑んでいく姿は、まさに戦士の背中でした。

 

バンクシーという謎に満ちた存在が、人々をこんなにも惹きつけてやまないのは、ひとえにその「危うさ」だと思うのです。

(彼女)はとにかく敵を作ってでも自分の言いたいことは言うタイプのようです。パレスチナの分断壁に面したホテルの内装展示、監視カメラに映らず絵画を描くそのスタイル、そしてディズニーを退廃的にした「ディズマランド」の映像。どれも衝撃的で、良くも悪くも心臓に悪いです。そのスタンスと技術と思想性、この閉塞した世界をぶち壊すような革命的なちからを、私もこの展覧会で感じました。

写真OKだったので、一気にお見せします。ネタバレ回避したい方はここでお別れしましょう。

 

天才か、反逆者か。どちらにでも傾きうる「危うさ」をはらんだ作家・バンクシーは、これからも社会と闘い続けていくのでしょう。

その姿を目に焼き付けたいと、私も心のどこかで願わずにはいられませんでした。

そんなところでこの話はおしまいです。それでは、また。