ゆったりまったり雑記帳

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「印象派への旅 海運王の夢」展レポ【note・ブログ共通記事】

はじめてひとりで新幹線に乗っています。どうも星野です。

今回は4/27に開幕した「印象派への旅  海運王の夢」という展覧会についてレポを書きました。

場所は渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアム、6月30日まで開催しています。

 

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ポスター

 

音声ガイドは海運王そのひとにガイドして頂けるという設定で、演じているのは大塚明夫さんでした、敵地に潜入したら段ボールに隠れそうな海運王です。

今回は規模があまり大きくないので、じっくり見ても2時間かかりませんでした、スキマ時間にばーっと観に行けるお手軽さもよいものですね。

開館時間は10:00~18:00(毎週金曜・土曜は21時まで開いています)、5月7日と5月21日と6月4日はお休みだそうです。

 

本展覧会の舞台は19〜20世紀のスコットランド。石炭の生産を背景に工業・海運業が発展した国です。大英帝国の一部ですがフランスの影響が強く、富裕層は絵画の収集に凝ったそうです。

そのひとりが、グラスゴー出身のウィリアム・バレル。

9人兄弟の3男で、家業を継いで大きくした人物であり、画商リードなどから絵を買い、膨大なコレクションを形成した「海運王」。

バレルは身の回りのものを描いた作品が好きだったらしく、フランス近代絵画を収集しました。

 

最初は彼の愛した身の周りの情景のうち、室内・静物と展開していきます。

この展覧会でちょっと驚いたことがありました。

それは「水彩画」が結構展示されている、ということです。

私は油彩をメインに鑑賞することが多かったので、水彩画の淡さや穏やかさを感じることができました。

室内の絵画は印象派の先駆的存在であるカミーユ・コローやテネブリズム(光と影のコントラストを強調したスタイル)を駆使した庶民画で名を馳せたテオデュール・リボーの作品が中心でしたが、私の心に残ったのはヤーコブ・マリスの「孔雀の羽を持つ少女」という作品でした。

なんだか寓意的で、その絵画に込められた意図を考えずにはいられませんでした。

 

絵画等の芸術作品に込められた「美の表現」以外の要素――古代から中世のキリスト教国家出身アーティストの作品では往々にして取り入れられる「寓意」もそうですが――を汲み取ろうとする行為は、果たして本当の意味で「作品の価値」を理解することに繋がるのだろうか、などと考えながら鑑賞しました。

 

私が現時点で立てている仮説ですが、「芸術作品は社会・文化・政治・アーティストの思想などの文脈と切り離して考えた方がよいときもあれば、考慮に入れた方がよいときもある」のではないかな、と。

作品によって寓意を感じ取ってほしいときもあるだろうし、もちろん鑑賞者のうちに生起する感情や思考と切り離して考えることはできません。

それでもあらゆる要素を出来る限り排して、純粋に「美」として知覚することが可能なのであれば、それこそが本当の意味での「芸術鑑賞」に繋がるのではないでしょうか。

例えば、ピカソの「ゲルニカ」を鑑賞して、理由はわからないけれど何か根源的な恐怖を感じた、などのように。

かなり日和っているので邪道でしょうが……。

余談ですが、寓意性から表現性へと絵画の主眼が移っていることにも注目したいなと。

 

脱線しました。戻します。

 

植物を描いた作品が多いのは、英国のガーデニング文化と関連しており、なかでも「再現性」と「表現性」を追求したのがラトゥールでした。

マネのバラの絵は洒脱な感じはしましたが、個人的にはペプローがイチオシです。

画家の美学が反映されていて面白いですよ。

あのポール・セザンヌの絵画もありました。セザンヌは非常に遅筆だったそうです。そこから脱印象派に繋がったのかな、と思うなど。

セザンヌの関心は、対象物を前にしたときの感情の再現性にあったそうなので、自然を見てまず描くよりも浸っていたかったのかもしれません。

メルヴィルという画家は亜鉛白を紙に染み込ませて乾かないうちに描く「ブロテスク」という手法をとったそうです。すごいことを考える人もいるものですね。

 

そして今回の目玉展示・ドガの「リハーサル」!

端麗な形、くすんだ色合いという繊細さと、構造の美的感覚に見られる大胆さとが絶妙なバランスで組み合わさっています。

鍛えた体型に美を見出したドガらしい作品です。

ちなみにスケッチと写真の合成で描いているとのことで、写真と絵画は決して相反するそんざいではないというのが良くわかる逸話だと思いました。

 

とても日本画チックで美しかったのがル・シダネルの「雪」という作品でした。

なぜかとても印象に残っています。

 

印象派の前に起こったバルビゾン派の作品も数多く展示されています。

マテイス・マリスなどは幽玄で幻想的でした。

ちなみに水彩は動くものを描くときに適しており、英国で発展しました。

勢いのあるタッチで光や大気をとらえているのですが、空気が汚れた所に置くとすぐに劣化してしまうため、バレルは郊外に保存用の建物を用意していたそうです。

「海運王」として工業発展に寄与した存在が、工業の排ガスを嫌う……なんとも皮肉ですね。

 

ここから先は写真OKゾーンなので詳細はぜひその目で確かめてみてください!

 

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お気に入りの作品

 

それでは、また。